TOPPAN 凸版印刷株式会社

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CREATOR’S FILE クリエイターズファイルトップクリエイターに、仕事や考え方について伺います

デザインの本質に迫る

6 古平正義

いま、グラフィックデザイン界で最も注目を集める若手グラフィックデザイナー、古平正義氏。素材や印刷への徹底したこだわりが、デザインに対してオブジェのような圧倒的な存在感をもたらしている。デザインとは、内容の良し悪しに関わらず、表面上の意匠に過ぎないのか。そんなデザインの在り様に警鐘を鳴らし続ける古平氏に、デザインの本質とは何か、ご意見を伺った。

第1話 「コンテンツの価値を引き出すデザイン」

デザインってそんなものじゃない

 もともとは、ミュージシャンになりたかったのですが、才能がないと早々に見切りをつけました。レコードジャケットなどのデザインに興味があったので、デザイン学校へ入学しました。最初は、クリエイティブな世界ももちろんですが、デザイナーという仕事の自由な感じに惹かれたのだと思います。デザインといっても広告の世界ではなくて、レコードジャケットや書籍の装丁などのグラフィックデザインから入っていったという感じです。
 広告に興味を持ち出したのは、学校を出て仕事をするようになってからです。ぼくは大阪出身なのですが、学校を出て地元の制作プロダクションにデザイナーとして入社しました。しかしそこでは、与えられた素材でクライアントの要望通りにつくる仕事が大半で、「デザインってそんなもんじゃない」といつも思っていました。
 その後、デザインをするなら東京かなと思い、1年ちょっとでその制作プロダクションを辞め、上京しました。いくつか事務所を訪問して、秋田寛さんの事務所(アキタ・デザイン・カン)に拾われました。

大事にされるデザイン

 秋田さんのところでは、ポスターから書籍、ロゴなど、さまざまな仕事を手がけました。4年間在籍して独立しましたが、ここで学んだことは大きかったです。
 事務所にいた頃、『建築MAP 東京』という書籍を手がけたことがあり、独立後同じクライアントから『ヨーロッパ建築案内』を依頼されました。ぼくにとってこの仕事が、デザイナーとしてのターニングポイントになりました。
 建築書というのは、建築家志望の学生や建築家など、買うターゲットが限定されている。この種の本のデザインもこれまで決まりきった作り方をされてきました。しかし、『ヨーロッパ建築案内』は、読書層の間口を広げ、もっと一般の人にも楽しんでもらえるような内容でした。
 ぼくの中にも、書籍のデザインに対して疑問がありました。中身であるコンテンツの価値を引き出すためにデザインをするのではなくて、ただ書店で目立つためにデザインしている。平積みするために、表紙は広告として機能しなければならない。流通の中で傷がつきにくいデザインでなければならない。それらも重要ですが、本は書店に置かれている時間よりも買った後の時間の方が長いはずです。買ってくれた人に大事にされる本にしたいと思いました。
 『ヨーロッパ建築案内』の仕事は、建築というコンテンツをぼくなりに解釈して、それをブックデザインというかたちで具体化させたものだと思っています。
 その後の『グッドデザイン年鑑』も、そんな流れにある仕事の一つです。最初のものはケースを、家電等を梱包しているパッケージのように見せました。中身が工業製品を取り扱っているので、そんな空気を装丁に表わそうとしています。翌年度はケースを“DESIGN”という文字で切り抜いて作っています。

特徴がないことが特徴

 ぼくのグラフィックデザイナーとしてのスタンスは、中身の価値をどう引き出すかというところにあります。個人の作家性を消して中身を際立てることが、デザイナーの役割じゃないでしょうか。
 もちろん、中身に関わる編集作業的な仕事をしてしまうこともあります。特にエディトリアルデザインの場合は、文字通り編集的な要素が不可欠なわけですが、意外に与えられた素材だけでレイアウトしているものが多い。
 確かに広告の世界は、ビジネスを成功させなければいけないので、クリエイティブディレクターやアートディレクターは、戦略も含めて考えていかなければなりません。しかしその根底には、つくり手が信念をもってつくった良いものを世に送り出すため、良いデザインや良い広告をつくる、という部分があるべきだと思います。

古平正義
グラフィックデザイナー。
1970年大阪生まれ。93年から96年アキタ・デザイン・カン勤務。97年に独立、フリーランスへ。2001年(有)フレイム設立。02年JAGDA新人賞受賞。

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