TOPPAN 凸版印刷株式会社

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CREATOR’S FILE クリエーターズファイルトップクリエーターに、仕事や考え方について伺います

カタチに想いを宿す

27 神原秀夫

MoMA(ニューヨーク近代美術館)のパーマネントコレクションにも収蔵されている「カドケシ」。それをデザインしたのが気鋭のプロダクトデザイナー、神原秀夫氏だ。2009年にはKDDI「iida」のケータイ端末「PLY」のデザインも手がけ、脚光と注目を浴びている。「当たり前のことを見つめ直す視点から生まれるアイデアはそのまま視覚化すれば優れたデザインになる」という神原氏のデザイン観についてお聞きした。

第1話 「当たり前のことを見つめ直す」

分解好きな子ども

実家が自動車整備工場を経営していて、いろいろな工具やオイルや排気ガスの中でのびのびと育ちました。
小学校の頃は家にある機械、たとえばビデオデッキのような家電製品などを分解するのが好きでした。でも小学生だから手順なんか関係なくバラしてしまい、元に戻せなくなって。今では家電製品が壊れると、心のどこかで分解できることを喜んでいる自分がいて怖いです(笑)。
父は仕事を離れたところでもモノ作りが好きで、建築資材を集めては家を増改築してしまったり、鉄板を自分で加工して非常階段を作ったりするような人でした。だから、普通なら買ってすませるようなモノも、作ろうと思えば作れるんだという感覚は、知らず知らずのうちに身に付いていたのかもしれません。

モノへの強いこだわり

高校生くらいになって自我に目覚めたというのか、他の人と足並みを揃えることに疑問を覚えるようになりました。
人が何かモノを選ぶときに、その基準が、誰かがいいと言っていたとか、雑誌に載ってるからとか、そういうことがイヤになってきていたんですね。そのモノを冷静に見たときに、本当にかっこいいのかと考えたらなんか違うと感じることがたくさんあって。
今でもモノを選ぶときはこだわりが強すぎて困っています。自分がモノを作る立場になってしまっただけに、そのモノのクオリティや、ここが壊れそうだとか、ここの塗装が剥げそうだとか、気になって仕方がないんですね。

“工作”で造形大学に入学

小さい頃は漠然と車のデザイナーになりたいと思っていたのに、車よりも白物家電に強い興味を持つようになってプロダクトデザイナーを志すようになりました。美大に進もうと決めたのが高校3年の夏。予備校でデッサンの授業を受けたら、40人中、下から3番目くらい。
でも東京造形大学は立体構成で受験できたんです。それは教わる必要がなかった。子どもの頃から分解して組み立ててというのを繰り返していたおかげか、構造を理解する力は鍛えられていたんだと思います。
大学に入って1、2年のときはぽーっと過ごしていたけど、それが変わったのが3年のとき。ゼミの担当教授が変わっている方で、まったく褒めない人でした。そして他の学生の作品で、その教授がおもしろくないと思っているものを、僕もおもしろくないと思っていることに気付いたんですね。それで、この人をおもしろがらせてみよう、いいねと言わせてみようと思って。2、3回やっているうちに、「おもしろい」と言ってくれるようになって、それから一気に楽しくなってきたんです。

プロダクトデザイナーとしてTOTOに入社

ありがたいことに希望どおりにプロダクトデザイナーとしてTOTOに就職できました。仕事として初めて取り組んだのが水道の蛇口のレバー。でもその頃って、いわゆる大量生産されるモノの作り方をきちんと把握していなくて、まったく型が抜けなかったり、生産できないものだらけで、その頃の自分に会えるなら説教してやりたいくらいです。
就職してから3D-CADとCGを使ってデザインすることを覚えました。3D-CADだと時間が1/5くらいに短縮できたし、モックアップを作るのも、3Dのデータをモック屋さんに渡すだけで済んでしまいます。このおかげで表現力は格段にアップしたなと思います。

デザインコンペでカドケシを発表

その頃はいろいろなデザインコンペに応募していました。「カドケシ」もそんなコンペの一環で応募したもので、社会人になって1年目のときでした。
文房具がテーマということで、どのアイテムで応募しようかと考えているとき、消しゴムっておもしろい製品だなと思いました。ひとつの素材でできていて、使っているうちに減っていってしまうというのもなんだか不思議で、シンプルで究極のプロダクトだなと思ったんです。そんなことから消しゴムに狙いを定めて考えはじめました。
まず持ちやすさにフィーチャーしてデザインを模索しようと思いました。でも僕は消しゴムを持ちにくいと思ったことが一度もありませんでした。
次に消しゴムが消しゴムとして機能している瞬間を真横から確認し、機能しているのは紙に触れている部分だけで、あとは持ち手だと気が付きました。そして重要なのは持ち手ではなく紙に接している瞬間。丸くなった消しゴムは上からではどこが触れているかわからない、それが確認できるのはカドが真新しいときだけ、でもすぐに無くなってしまう…。そんなひらめきから消しゴムが機能を存分に発揮する瞬間をデザインすることにたどり着きました。
要は当たり前すぎて誰も気付かなかったこと、見えていなかったこと。そういうものほど、それを見つけたときにすごくインパクトが大きいし、そこをちょっと変えるだけで、新しいモノ、新しいデザインが成立するんですね。
実は商品化やそれ以降のバリエーション展開について、僕はまったくタッチしていないのですが、今も元のアイデアからカタチも比率もまったく変わっていません。
それだけに、純粋にアイデアとデザインが評価されたのかなと思うし、MoMA(ニューヨーク近代美術館)のパーマネントコレクションに選ばれたとか、音楽家の方が楽譜を書くのに重宝されているとか、そういう話を見聞きすると、みんなカドが好きなんだなあと嬉しく思います。

神原秀夫
プロダクトデザイナー
1978年広島県生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業後、TOTO株式会社にてプロダクトデザイナーとして勤務したのち、株式会社電通を経て、2009 年BARAKAN DESIGNを設立。コクヨデザインアワードから生まれた28個のカドを持つ「カドケシ」、KDDI株式会社から発売されている「iida」ブランドの新商品「PLY」の生みの親。

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